Agile HR Community Meetup Report
2019/07/17
アジャイルHRコミュニティは、世界基準のアジャイルHRを確立するため、幅広い業界の経験豊富な人事の専門家が、各会社にどのようにアジャイルHRスキルを適用するか、理論と実践をつなぐノウハウを得るためのコミュニティ。people geeks(ピープルアナリティクス、アジャイルHRコンサル)のメンバーが中心となり2018年夏に設立。
・人事が抱える課題はリテンションが一番。いかにemployee experimentを高めるかという点が(日本より)大きな比重を占めている。
・目に見える形でいうと、社員向けにソフトドリンクやビールなどを無償提供する会社は日本ではまだ少ないが、ロンドンだと先進的なオフィスであれば普通になっている。
・参加者は、スタートアップでこれからどう人事を回していくかを考えている人と、グローバル大企業で国をまたいで人事管理しなければならないものの「仕組みを変える」ことの大変さに直面している人の2つのパターンが多かった。
・アジャイルHR自体はヨーロッパでも2〜3年前からトレンド入り。ただ、どのように実装するかが浸透しているとまでは言えない状況のよう。AgileとFrexibleの違いを理解していない人も多いと話す人もいた。
・HRテクノロジーは、(数人と話した限りでは)タレントマネジメントやコミュニケーションツールの面では日本より普及が進んでいるものの、AIを本格的に活用するまでには至らず。
・ただ、人事に限らず、「データに基づく判断」というのは政府主導で2010年ごろから浸透しており、データ活用の意識自体はイギリス全体で高い。専門のデータサイエンティストはずっと不足している状況なので、人事など元々専門外の人も自分でpythonなどを学んでデータ分析しようとしているようでした。
2019年7月17日(水)18時〜21時@ロンドンBeyond社オフィス
・アジャイルHRは、元々テクノロジー企業の用語であるが、5〜6年前に人事での取り組みが始まった。要は、人事の仕組みの変更を少しずつ変えてテストしながら進めていく方法。
・アジャイルHRは、「Agile for HR」と「HR for Agile」の組み合わせ。
・「Agile for HR」とは、マインドセットと仕事の進め方をPDCAを回しながら見直していくこと。様々な社員がビジネスバリューの上げ方を一緒に考えること、エビデンスを基に考えることが重要。全ての課題をブレイクダウンして並べて、視覚化して、優先順位をつけていく。人事の課題を抱える様々な社員(注:典型的な日本企業と違い、本社人事は少数で各セクターにも人事がいるので、彼らを巻き込むという趣旨だと思われます)が一緒に集まって考える。
・「HR for Agile」とは、上記のアウトプットとして、人事がアジャイル化した状態。組織のアジャイル化が進み、人事はアジャイル化した組織を助けるための存在に変わっていく。
・Beyond社は、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドンに拠点をもち、デザインシンキングに基づいてイノベーティブなデジタルデザインを提供する会社。
・主にリテンションの面で課題を抱え、人事のあり方を含め業務全体を見直すためアジャイルHRに挑戦。
・「treat your culture like a product」:自社の文化を製品のように扱い、EX(employee experience)を高める価値を段階的に高めていくことで、自社の文化を継続的かつ自然に向上させるソリューションを考え出した。
・まずは、人事の機能を「EX(employee experience)」、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」、「L&D(Learning & Development)」、「タレント戦略」の4つに分解し、それぞれの視点、混ぜ合わせた視点でやるべきことを書き出していった。
・また、業務のあり方(ways of working)の見直しについて、以下の4つのスタイルを取り入れて見直しを進めた。
ー 「Sprint」:期限を短く区切って、成果を出す。
ー 「Swarms」:チームとしてプロジェクトを進めるため、チーム員同士が打ち解けられるような仕掛けを工夫した。
ー 「Stand ups」:立ち会議を採用してミーティングを長く続けない。
ー 「Kanbans」:カンバン(看板)方式。やるべきことを全て書き出して視覚化し、進捗を共有する。
・また、次の5つを意識した。
ー 「Human Centred」:人間中心ということで、いかに従業員のエクスペリエンス、エンゲージメントを高めるかを考えた。たとえば、職場にコーヒーを提供するなど小さなことから。
ー 「Principles」:AgileHRプロジェクトを進める際の考え方の原則を分かりやすく整理した。複雑で長い原則だとわからないので、簡単な箇条書きに整理した。
ー 「Adaptability」:いきなり高い目標を課すのではなく、短い期間に達成可能な目標を積み上げていくことで、チーム員が離脱しないようにした。
ー 「Transparency」:透明性を高めることは重要。現在どのようなプロジェクトを進めているのか、進捗状況がいつでも他の社員から見えるようにして、他人事にならないようにした。
ー 「Data Driven」:人事にとって一番難しいことであるが、「負荷」ではなく「今の業務が簡単にできるようになる」ということをベストプラクティスととともに示して、マインドセットを変えることを心がけた。
・プロセスとしては、「発見と洞察」、「言語化して共有する」、「チームのダイナミクスを高める」、「継続的なロードマップに落とし込む」というプロセス。
ー CEOを説得してトレーニング方法を改善し、チームダイナミクスを高める方法をとった。
ー やるべきことを93個ピックアップし、Backlogの形で優先順位づけし、4〜6ヶ月で達成すべき成果を整理した。
ー 人事関係のチームに新規に加入したメンバーには必ず進捗を共有した(ウェブベースではなく、紙で印刷して見える形にすることが重要)
ー Beyond社に入社してから1日目、1ヶ月後、2〜3ヶ月後、半年〜1年の段階での平均的なjourneyを特定し、それに応じた取り組みを考えた。
ー MoSCoW方式、カンバン方式を採用し、付箋で項目を張り出して進捗管理。チームメンバー全員に見える場所で共有することで、チームの一体感を高めた。
・これらの取り組みによって飛躍的にemployee experienceを高めることに成功し、Beyond社のPeopleチームはGlassdoor社の表彰など数多くの受賞歴がある。
・4〜5人のチームでそれぞれディスカッション。私がジョインしたチームでは、各社ともこれから取り組みを始めるものの、課題が山積していてまだ具体的に考えるフェーズではない、、という感じのコメントが多かった。